介護福祉系のビジネスのなかでも、デイサービスは新規参入者から関心や注目を集めている傾向にあります。果たして儲かるビジネスなのか、どんな利点があるのか、どんな点に注意が必要なのかについて検証しましたので、ぜひ参考にしてください。
社会の高齢化がどんどん進む現在、介護福祉系のサービズに対する需要は全体的に増加傾向にあります。その中でも、日中、高齢者を預かり、様々なケアを行うデイサービスは、どのような状況を迎えているのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
結論から先に申しますと、デイサービスに対する需要というもの自体は、年々右肩上がりで増加しています。とある調査によれば、デイサービスの利用者は2008年には約113万人だったものが、2015年には約190万人にまで増加したというデータが示されています。
例えば、高齢者のいるご家庭で、食事や入浴の介助やレクリエーションの提供をご家族がすべて行うのは、なかなかに大変です。そうしたことを、外部委託できるのがデイサービスであり、今後もニーズは高まって行くものと予測されます。
需要のあるところに利益を生み出す期待があるというのがビジネスの法則です。しかしながら、ことデイサービスに関しては、前述の通り高い需要があるにもかかわらず、ビジネス的には厳しい状況を強いられているというのが現実です。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)の2023年の調査では、2021年の地域密着型のデイサービスで31.3%、大規模型でも2割~3割程度が赤字経営に陥っているとのことです※1。
また東京商工リサーチの2023年の調査では2022年の老人福祉・介護事業所の倒産件数は過去最多の143件、そのうちデイサービスを含む通所・短期入所介護事業の倒産件数は69件だったそう※2です。(※1※2とも2023年4月14日確認時点)
上記の通り、需要自体は高いのに、デイサービスの経営というものは厳しい現実を突きつけられるという傾向が高いというのが実情です。なぜ、そうなってしまうのでしょうか?主には以下のような理由があり、場合によってはそれらが複合しているからと考えられています。
ビジネスチャンスのあるところに新規参入者が集まるのは世の常ですが、デイサービスの場合、ニーズを上回る新規参入者が増え続けた結果、限られたパイをデイサービス業者同士で奪い合うという事態となり、業者同士での競争が激化し、経営を圧迫という事態に陥ってしまっているからというのがひとつです。また、近年のコロナ禍の影響もあり、2022年のデイ・サービスの倒産件数は45件でした。
デイサービスの経営が大きく圧迫される原因のひとつと指摘されているのが、2015年の介護報酬改定になります。介護事業者がサービスを提供する対価として国から受け取れる介護報酬が、それ以前と比べ、約10%も削減されたことで、赤字経営や倒産に追い込まれるデイサービス業者が続出しました。上記の通り、3年連続で40件前後のデイサービスが倒産という事態となったため、2018年に若干のプラス改正が行われたものの、焼け石に水という感が否めません。
デイサービスに限らず介護系のビジネス全般に言えることですが、人材確保の難しさという点も大きな要因です。そもそも高齢者のサポートとには大きな労力が求められますが、介護系職員の給与は総じて低い傾向があり、その結果、労力と収入が見合っていないと離職してしまうケースが頻発してしまっているのが現状です。他業種に人材が流失してしまったり、同じデイサービスでもよりよい条件を求めて転職するということが、起きがちとなっています。
デイサービスに必要なコストのうち、人件費が占める割合は実に70%にものぼるとされています。前述しました通り、人材流出防止のために給与を増額する必要に迫られる、あるいは欠員を埋めるために求人広告の費用を掛けざるを得ないといった事態を強いられることが起きやすくなってしまいます。加えて都市部エリアなどでは、サービスを提供するための施設の賃料や購入費用も高額になりがちという傾向もあります。
繰り返しになりますが、今やデイサービスはニーズを上回る業者が乱立してしまっている状態です。地域にデイサービス施設がひとつだけという場合はさておき、利用者が複数の施設を選べるという状況では、競合他社との差別化や、高齢者のニーズにより的確に応えるということが重要になってきますが、ただでさえ厳しい経営状況に直面しているケースが多く、そこまで手が回らないと言うケースは多く見られます。
以上の通り、高齢化がますます進行すると予測される状況において、デイサービスへの需要はますます高まると思われますが、成功を収めるためには、いくつかの対策が不可欠と言えます。以下の戦略を、検討してみてください。
例えば、ケアの難易度がより高くなる重度障害者や認知症患者を専門的に受け入れるといった特色を打ち出せば、他のデイサービス施設との違いを明確に打ち出すことができます。また、サービス提供施設をこれから新設するのであれば例えばホテルのような洗練された空間とする、レクリエーションや食事の内容を充実させるといった手法も考えられます。
デイサービスの施設は、一旦オープンさせたら、おいそれと移転できるものではありません。それゆえ、開設予定地の周辺に競合するデイサービス業者が何社あるのか、どのようなサービスを提供しているか、そのエリアの高齢者や要介護認定者の人口はどれくらいかといったことを調べ、戦略を練ることが求められます。
デイサービス事業において、新規顧客の獲得を大きく左右するのは、地域の病院や有料老人ホーム、介護支援事業所などとの関係性です。病院の医師や介護系施設のケアマネージャーといった方々とのつながり、信頼や信用といったものは、新規顧客獲得の大きなプラスとなるはずです。
TYPES
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