高齢化の進行によりデイサービスの需要は増加中ですが、それにもかかわらずデイサービスを開業しても、失敗・倒産してしまう例が少なくありません。ここでは、失敗する理由や失敗しないための経営改善策を解説しています。
ご存じの通り、目下日本は高齢化の真っ只中です。この状況が当面続くことがほぼ確定している中、おおむね2045年までは介護需要が大きく伸び続けると予想されています。
介護需要が伸び続けるということは、その関連事業であるデイサービスの需要も伸び続けるでしょう。実際に2023年現在のデイサービスに対する需要も、急速に伸び続けています。
その一方で、2020年における介護事業所の倒産件数は118件と、過去最多を記録しました。118件のうち38件はデイサービスの倒産です。38件のうち、新型コロナウイルス感染拡大の影響で倒産した事例は、わずか8件でした。
需要が急伸しているにもかかわらず、コロナ以外の何らかの理由で、30件ものデイサービスが倒産しています。
需要があるにもかかわらずデイサービスが倒産する理由は、主に次の3点となるでしょう。
定員に対する利用者の率、つまり稼働率が低いことが、デイサービス倒産の主な理由の1つです。一般的な店舗で言えば、単純に「お客さんが少ない」ということになります。
仮に定員50名のデイサービスを開業したとしても、利用登録者が30名程度であれば、稼働率は60%となり売上が悪化します。サービスを頻繁に休む利用者がいれば、さらに売上悪化につながります。
そのような状況が長期的に続けば、やがて赤字がかさんで倒産する恐れがあるでしょう。
介護スタッフが定着せず、施設を回せないことが理由で倒産するケースも見られます。もとより、スタッフ不足により人員配置基準を満たせない場合には、施設の運営を諦めざるを得ません。
マスコミ等でも報道されているとおり、介護業界における人手不足は深刻です。人手不足の理由にはさまざまありますが、主な理由は、大変な仕事であるにもかかわらず給与が低いことにあるでしょう。
ちなみに、介護業界の花形資格でもある介護福祉士の推定平均年収は約330万円。一般企業の平均年収とされる440万円に比べ、100万円以上もの差があります。介護福祉士に比べ、一般介護職員の平均年収は、さらに低くなるでしょう。
介護スタッフの雇用に関連するコスト高が原因で施設の経営を圧迫し、倒産へと至るケースもあります。
もともとデイサービスのコストの約70%は介護スタッフの人件費とされていますが、上述のとおり現場では介護スタッフの人手不足が深刻化しているため、より高い確率でスタッフを確保するために給与を増額する施設が少なくありません。また、人手不足の中でスタッフを確保するためには、求人広告・採用活動にもよりコストをかけなければなりません。
結果、1人あたりのコストが高騰し倒産へと至るケースが見られます。
H2 デイサービスの経営改善策デイサービス運営の失敗や倒産を避けるための経営改善策としては、主に次の4点を見直す必要があります。
改めて事業の理念をスタッフ全体で共有し、営業戦略を徹底的に見直します。見直しにあたっては、理念に照らして利用者のターゲットを明確化することが有効です。
ターゲットを明確化してチラシやHPに反映させれば、その方針に共感した営業圏外からの利用者も増加する可能性があります。「誰でもいいから、とにかく利用者の人数を集めたい」という姿勢では、かえって営業が苦しくなることがある点を理解しておきましょう。
人手不足で経営が立ち行かなくなっている施設では、給与以外の入職者ニーズを明確化してみましょう。たとえば「良好な人間関係」「柔軟なシフト」「時短パート勤務可能」などです。
「人手が少ないから給与を上げて募集する」というシンプルな発想では、コスト高となって倒産を招く恐れがあります。
離職率の高い施設では、「スタッフが辞めない施設作り」を真剣に考えてみましょう。たとえば、「悩みを上司に気軽に相談できる」「ムダな会議がない」「教育制度がしっかりしている」などです。 スタッフの定着率が上がれば業務が効率化することに加え、新規雇用に関連するコストも削減されます。
加算制度を活用し、スタッフの給与に還元するなどして職場満足度の向上を図ります。
介護職員処遇改善加算では、加算Ⅴが1人あたり月額12,000円であることに対し、加算Ⅰは1人あたり月額37,000円です。両者の施設におけるスタッフの職場満足度は大きく異なることでしょう。
仮に介護職員処遇加算分を全額スタッフの給与に反映させれば、ⅤとⅠでは年収に300,000円もの差が生じます。
デイサービス開業を失敗しない有効な選択肢の1つとして、FC(フランチャイズ)で開業するという方法があります。
経営ノウハウや成功マニュアルがない個人がデイサービスを開業しても、経営を軌道に乗せるまでには多くの苦労が伴うことでしょう。苦労している最中に倒産してしまう可能性すらあります。
一方でFCの場合、未経験者であっても事業を軌道に乗せるためのノウハウやマニュアルが整っているため、失敗するリスクを大きく押さえられます。各種の申請手続きもFC本部が代行してくれることも多いため、雑務に忙殺されて本業がおろそかになる恐れも少ないでしょう。
失敗の可能性を抑えつつデイサービスを開業したい方や、すでに経営に行き詰まっているデイサービスを経営中の方は、FCという選択肢があることに注目してみてはいかがでしょうか。
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