重度訪問介護は、誰でも簡単に大きな利益を出せる事業ではありません。しかし、利用者を安定して確保し、適切な人員配置やコスト管理を行うことで、収益化を目指せる事業です。実際の収支データや事業の仕組みをもとに、「重度訪問介護は儲かるのか」を詳しく解説します。
厚生労働省の「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」によると、重度訪問介護事業所の令和6年度決算における平均収支差率は6.4%でした。前年度の7.7%からは低下しているものの、平均では収入が支出を上回っています。
一方、収入に対する給与費の割合は74.8%です。重度訪問介護は人件費の占める割合が大きいため、「重度訪問介護を始めれば自動的に儲かる」というわけではありません。利用者を安定して確保しながら、スタッフの配置や採用・教育などにかかるコストを適切に管理することが重要です。
参照元:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」
重度訪問介護で利益が生まれる仕組み
重度訪問介護は、常時介護を必要とする方に対し、身体介護や家事援助、見守り、外出時の支援などを比較的長時間にわたって総合的に提供するサービスです。
短時間の訪問を繰り返すサービスとは異なり、一人の利用者に対して長時間サービスを提供するケースが多いため、利用者を安定して確保できれば、一定のサービス提供時間と収入を確保しやすくなります。
ただし、サービス提供時間が長くなれば、その分だけ利益も比例して増えるわけではありません。スタッフの給与をはじめとする人件費の割合が大きいため、利用者の確保とスタッフの稼働率・人件費のバランスが収益性を左右します。
重度訪問介護で安定した経営を目指すには、利用者の獲得だけでなく、人材採用や研修、事業所運営の体制づくりも重要です。開業・運営のサポートを受けられるフランチャイズも含め、自社に合った事業モデルを比較してみましょう。
重度訪問介護は、簡単に儲かるとは言えないものの、サービスの利用者数や総費用は増加傾向にあります。重い障害があっても地域や自宅で生活したい方を支えるサービスとして、継続したニーズがあります。
厚生労働省が公表している国保連データによると、重度訪問介護の利用者数は令和3年4~6月の11,599人から、令和7年4~6月には14,070人へ増加しています。
同期間の総費用も9,077百万円から14,541百万円へ増加しており、重度訪問介護サービスの利用規模が拡大していることが分かります。
参照元:厚生労働省「重度訪問介護:総費用、利用人数、1人当たり費用額」
重度訪問介護の利用者数は増加しており、常時介護を必要とする方の地域生活を支えるサービスとして継続的な需要があります。
ただし、需要があることと、事業所が利益を出せることは別問題です。利用者の確保だけでなく、必要なスタッフを採用・定着させ、効率的な人員配置を行えるかどうかが安定経営のポイントになります。
一つ目の理由は、重度訪問介護が長時間のサービス提供を前提とした報酬体系になっていることです。
厚生労働省では、短時間に集中して支援を行う居宅介護に対し、重度訪問介護は同一箇所に長時間滞在してサービスを提供する業務形態を踏まえ、8時間を区切りとする単価設定としています。
また、8時間を超えてサービスを提供する場合は、事業所の管理コストが逓減することを踏まえ、8時間までの報酬単価の95%相当額を算定する仕組みです。そのため、単純にサービス提供時間を長くすれば、そのまま利益率も上がるわけではありません。
参照元:厚生労働省「障害福祉サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」
二つ目の理由は、人件費の負担が大きいことです。厚生労働省の調査では、重度訪問介護事業所の令和6年度決算における給与費割合は74.8%となっています。
重度訪問介護では長時間の支援や夜間の対応が必要になるケースもあり、サービス提供時間を確保するためにはスタッフの採用と適切な配置が欠かせません。
利用者が増えても、それに対応できるスタッフを確保できなければサービス提供量を増やせません。また、離職が続けば採用や教育にも繰り返しコストがかかるため、スタッフの定着も収益を左右する重要なポイントです。
重度訪問介護で働くスタッフの給与は、勤務先や勤務時間、夜勤の有無、保有資格などによって異なります。
特に夜間や深夜の勤務が含まれる場合は、手当や割増賃金によって収入が変わるため、求人を比較する際には基本給だけでなく、勤務時間や各種手当まで確認することが大切です。
スタッフとして収入を増やしたい場合は、夜勤を含む勤務や資格取得による手当など、勤務先の給与制度を確認しましょう。
ただし、収入だけでなく勤務時間や身体的な負担も考慮し、自分のライフスタイルに合った働き方を選ぶことが重要です。
平均収支差率はプラスとなっているものの、すべての事業所が同じように利益を出せるわけではありません。安定した経営を目指すには、売上を確保すると同時に、人件費をはじめとするコストを適切に管理する必要があります。
重度訪問介護で収益を確保するには、まずサービスを継続的に利用してもらえる体制をつくることが重要です。
地域の相談支援事業所など、利用者のサービス選択に関わる関係機関との連携を深め、事業所の支援内容や受け入れ体制を知ってもらうことで、利用者との接点を増やしていきます。
利用者を確保しても、スタッフの勤務時間に空きが多ければ、人件費に対して十分な売上を確保できません。一方で、人員をぎりぎりまで減らせばスタッフへの負担が増え、離職につながる可能性があります。
利用者のサービス提供時間とスタッフのシフトを調整し、無理のない範囲で稼働率を高められる人員配置を目指すことが重要です。
記録や請求、シフト管理などの事務作業を効率化することで、サービス提供以外にかかる業務負担を減らせます。
また、研修体制や勤務環境を整え、スタッフの定着率を高めることも重要です。採用と教育を繰り返すコストを抑えながら、安定してサービスを提供できる体制づくりが収益の安定につながります。
重度訪問介護は、「始めれば簡単に儲かる」という事業ではありません。しかし、厚生労働省の調査では令和6年度決算の平均収支差率は6.4%となっており、適切な運営によって利益を確保している事業所があります。
一方で、給与費割合は74.8%と高く、利用者の安定確保だけでなく、スタッフの採用・定着や人員配置、コスト管理が収益性を左右します。重度訪問介護への参入を検討する場合は、開業後の利用者獲得や人材確保まで含めた事業計画を立てることが大切です。